2014-01-01から1年間の記事一覧

ロシア科学技術情勢―模索続くソ連からの脱皮

「ロシア×科学技術」といったときのイメージは「重工業」「宇宙開発」「核兵器」といったものが多いかもしれない。冷戦期の米ソ対立の中でのロシアの科学はそういった面が強いのは確かだろう。ソ連崩壊後20年以上経つ今、ロシアの科学技術はどうなっているの…

言論抑圧―矢内原事件の構図

戦前期における思想・言論弾圧事件として著名な矢内原事件(1937)を出版界の状況、大学の内部抗争、政府からの圧力といった多面的な視座から緻密に描き、現代に通じる思想的課題を提示した本。学内で陳謝することをもって幕引きが図られようとしたさなか、…

NASA―宇宙開発の60年

設立から約60年が経とうとしているNASA(米航空宇宙局)の歴史を概観した本を読了。単なる宇宙開発・宇宙科学の歴史ではなく、政治や行政といった要素を中心に据えたNASAの「組織史」を俯瞰することができる良書だった。 NASA ―宇宙開発の60年 (中公新書)pos…

日本における産学連携―その創始期に見る特徴―

明治初期から第二次世界大戦にかけて、日本の産学官軍連携はどのような状況にあったのか?第一次世界大戦を契機とした、産学官軍の密接な連携を詳述した論文。本論文では、大学の学知の中でも工学、医学、化学といった応用部門が取り上げられその産学官軍の…

欲望と消費の系譜(3章、4章)

昨日の続きで第3章と第4章を読みました。 欲望と消費の系譜 (消費文化史)posted with amazlet at 14.09.03ジョン・スタイルズ ジョン・ブリューア イヴ・ローゼンハフト アヴナー・オファ エヌティティ出版 売り上げランキング: 59,232Amazon.co.jpで詳細を…

欲望と消費の系譜(序章、1章、2章)

来週開催される読書会に向けてつらつらと読んでいます。物質的なものだけでなく非物質的なものも消費の対象として捉え、多様な形態をとる「消費文化史」を描き出そうとする試みの書です。 草光俊雄/眞嶋史叙『欲望と消費の系譜』NTT出版, 2014 欲望と消費の…

原子核・素粒子物理学と競争的科学観の帰趨

昭和前期における日本の物理学者たちの研究に対する姿勢を「競争的科学観」という概念を設定して分析した論考を読みました。「西洋においつきおいこせ」、その内実は複雑さに満ちていたようです。 岡本拓司, 「原子核・素粒子物理学と競争的科学観」『昭和前…

日本における科学史の社会的基盤と社会的インパクト

現代における知的営み、それはその外部としての「社会」を想定することなしに語る事はできません。メディチ家がレオナルド・ダ・ヴィンチを養っていた時代は遥か昔に終わり、現代の学術研究は筆者の言う種々の「社会的基盤」を伴うことなしに営まれることは…

迎賓館参観

迎賓館赤坂離宮の建物内部一般公開に参加してきました。全部で2万名しか参観出来ない狭き門?だったのですが、5月に開催された皇居宮殿一般公開の抽選に外れて悔しい思いをしただけに、楽しみにしてきたイベントです。安全上の理由という事で内部の写真撮影…

月刊ポスドク創刊記念特大号

『月刊ポスドク』の表紙ができたらしいw pic.twitter.com/SwC2ceRdIO— Yuichiro Kobayashi (@langstat) 2014, 5月 19 twitterで表紙が作成されたところ、一部ポスドクの皆さんが本気を出して中身まで作ってしまったという『月刊ポスドク』8月号を読みました…

「科学者の自由な楽園」が国民に開かれる時―STAP/千里眼/錬金術をめぐる科学と魔術のシンフォニー

『現代思想2014年8月号-特集・科学者 科学技術のポリティカルエコノミー』に掲載された中尾麻伊香さんの論文を読みました。理研という「科学者の自由な楽園」は、国民との危うい関係の上に成り立っていたとも言えるのではないでしょうか。 中尾麻伊香「「科…

ラトキン「ヨーロッパ史のなかの占星術」

Bibliotheca Hermeticaを主宰されているHiro Hiraiさんが7月22日から25日にかけて「科学革命の史的コンテクスト インテレクチュアル・ヒストリーの方法と実践」と題して駒場にて集中講義を行われました。私が報告を担当した文献について簡単にまとめを置いて…

Shut up and calculate !

Nature誌が第1次世界大戦勃発から100年、第2次世界大戦勃発から75年を契機として、戦争と科学に関する論考を断続的に掲載していくようです(参考記事:http://www.nature.com/news/conflict-of-interest-1.14470)。まず公開された二つの論考のうち、David K…

近代化を抱擁する温泉―大正期のラジウム温泉ブームにおける放射線医学の役割―

大正期のラジウム温泉ブーム、そこでは勃興期の放射線医学が大きな役割を果たしていました。しかしその構図は単に「近代科学としての医学が温泉の効能に裏付けを与えていった」という一方向的なものではありませんでした。近代日本において西洋由来の科学知…