映画「ダンケルク」感想(ほとんどメモ)

映画「ダンケルク」の試写会にあたったので観て来ました。世界三大撤退戦の一つ(他の二つは島津の退き口とキスカ撤退戦、当blogの独断と偏見による)とあっては行かないわけにはいきませんでした。以下、ネタバレ満載の極めて個人的感想めいたものを箇条書きに。思い出したら追記します。


総評:人間が戦争やれば人が死にます。誰が死ぬかは運次第。


・一兵卒視点というかボトムアップ視点というか。「頭のいい作戦参謀が秘策を編み出したのでみんな助かりました!」とかいう戦意発揚映画ではありません。主として運よく生き残った一兵士(とサブキャラ数人)の密着ドキュメントという感じ。前日談、後日談を挟まない、回想シーンもない徹底した切り取りドキュメント。


ダンケルク沿岸で撃沈される駆逐艦に看護「婦」が載っているのだが、第二次大戦時に英海軍は戦闘艦に女性を載せていたのだろうか。素朴な疑問。


・とかくドイツ兵の顔が見えない。というか出してない。見えない恐怖という趣旨なのか、一兵卒視点の徹底なのか。ドイツ側という意味で一番出てくるのはメッサーシュミットだが、パイロットの顔はなし。Uボートの恐怖は語られるが、映るのは魚雷の航跡だけ、冒頭で主人公含む何人かが独軍に撃たれるが、独軍が射撃する描写は一切なし。


・救出に赴く民間船を徴用する際のドラマもまっったくなし。「海軍の徴用だ」「いってきまーす」で終わり。ふつーにダンケルクを映画化するなら「閣下、民間船を徴用するしかありません!」「ふざけるな、市民の命を危険にはさらせん!」「いやしかし!」「閣下、俺たちは行きますぜ!」みたいなのがあってもおかしくない。


・同じ文脈で、救出に行く小型船に飛び入りっぽい少年が乗り込み、ダンケルクに赴く途中で救出された兵士と掴み合いになって頭打って死ぬ描写がある。「ダンケルクに行かずに戻れ」と喚いていたその兵士をだまらせたという意味では意味のあるイベントだったのだが、それよりもむしろ、「戦争には無駄な死、理不尽な死」がありますというメッセージか。


・救出に赴く小型船の船長が、「ブリッジ・オブ・スパイ」でソ連スパイ役を演じたマーク・ライランス。戦闘機の攻撃回避方法といい、「お前どう見ても先の大戦の生き残りだろ」と思ったが、年齢的にもそれはない。指揮統率能力といい、任務達成への意志といい、絶対に軍人上がりなのだがそういった描写は一切なし。


・なんか字幕がいい加減な気がする。空軍パイロットがスピットファイヤを略して「ファイヤ」と言っているにもかかわらず字幕がなぜか「ファリア」。謎。あと一箇所どう考えても誤字としか思えない箇所があった。忘れたけど。


・人の死に方の描写は的確。溺れ死んだ奴が一番多かったのだろう。


IMAXで見たのと、ノーランの実物主義(らしいですね)のせいか、スピットファイヤの戦闘シーンは本当に迫力があった。


・ていうかどうでもいいんですけど、映画館で映画を見ると一時停止したり巻き戻ししたり英語の発音を英語字幕で確認したり高速で流れるエンドロールを見直したりできないから極めて不便。


ダンケルクの発音は「ダンカーク」。なお「カー」の部分は有気音です。