欲望と消費の系譜(3章、4章)

昨日の続きで第3章と第4章を読みました。


欲望と消費の系譜 (消費文化史)
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  • 第3章「ショッピングとしての通貨―仮想ショーウィンドゥの中の無形商品」


本章では18世紀のデンマークの投資家バルタザール・ミュンターに関する資料をてがかりに、消費者としての投資家を中心に据えた金融史の再検討の意義が提示されています。目前の販売者に対する信頼に基づいて「無形の商品」を取引する投機という行為について、ミュンターが息子に宛てた書簡の分析を通じて、彼自身の一消費者としての心の動きが叙述されていきます。ポイントとしては、①お金に働いてもらうことの倫理性に対する自覚の芽生え、②無形の商品を売買するという意味での投機に、その背後にある経済の動き(生産者、奴隷貿易など)を想像することを通じて物質性を与えようとする試み、の二つでしょう、たぶん。単に利ざやを稼ぐだけの営みとしての投機を行なう合理的な投資家像を想定するのではなく、様々な尺度で自分の判断に「迷い」ながらお金を投じる消費者像を想定することにより、より豊かな消費文化史が記述できるのではないかと筆者は指摘します。

  • 第4章「消費と幸福」

アレキサンダー大王が道端で木の樽を住処としていたディオゲネスに会いに行ったときの話だ。アレキサンダーディオゲネスに何かしてやれることはないかと尋ねた。ディオゲネスは、陽の光を遮るのをやめてほしいと懇願した。アレキサンダーは「もし私がアレキサンダーでないのなら、ディオゲネスになりたい」とこたえた。ここに、幸福の解決困難な二面性が垣間見えるともいえよう。(p159より抜粋)


おどる民だます国 英国南海泡沫事件顛末記
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