昭和45年11月25日

「英雄のいない国は不幸だ!」
「違うぞ、英雄を必要とする国が不幸なんだ。」


ブレヒトガリレイの生涯』より

昭和45年11月25日、陸上自衛隊東部方面総監部に押し入った三島由紀夫は総監を人質にとった後、駐屯地の自衛官に向けて檄文を配し演説を行います。自衛官の賛同を得られるはずもなく、三島は自決。割腹自殺後に介錯を受け、首と胴が離れた状態での壮絶な死でした。本書はその日、様々な人物が三島をめぐって何を思い、何を喋ったのか、その記録です。



筆者は120人の文化人、政治家、マスコミ関係者等の書籍や証言をこの日に引きつけて整理し、「その日、日本が何を思ったのか」を浮き彫りにしていきます。様々なエピソードが積み重ねられていきますが、筆者は結論として「情報が多過ぎて、何が真実なのか分からない。四十年前に三島由紀夫は情報化社会を体現したのである。」と述べています。少数のメディア関係者に周到に根回しし、全国民が注視する「舞台」の上で死んでいった三島。死後情報は氾濫し、三島の動機、そして一連の行動に対する評価は今もって定まりません。佐藤栄作から村上春樹まで、ありとあらゆる同時代の人物が何らかの反応を示した三島事件・・・本書に現れる数多くのエピソードはそれ自体、三島が時代の寵児であり、代表的な作家であったことを端的に示しています。


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