シンポジウム「日本のエネルギー政策を多面的に考える」参加記録


久々の更新。


中の人からお誘いがあったので、駒場祭に合わせて数理科学研究棟大ホールで開催されたシンポジウム「日本のエネルギー政策を多面的に考える」に参加してきました。


参加者は200人ほど、大半が中高年の男性でした。申し込み段階から学生の参加希望がほとんどないという話を聞いていたのですが、実際その通りでちょっと残念。ただ、最後の質疑応答の際にピックアップされた質問のほとんどが学部生のものだったので、主催者の方が配慮されたみたいでした。


プログラムは以下の通り、演者は6名。
http://www.komed.c.u-tokyo.ac.jp/fes/


聞きかじってきた内容を記述する前に触れておきたいのは、この手の議論はある程度共通の数字というか現状認識みたいなものなしには不毛だということです。数値の引用はエネルギー白書やIPCCの報告書がメインでしたが、試算の数値一つとっても演者によって前提が微妙に違っていて、それをもとに将来シナリオを議論していたので食い違うのも当たり前だったと思う。おおよそ学問的な意味での建設的なやり取りはあまり見られませんでした。


一人目の山口先生は経済学者で、IPCC気候変動に関する政府間パネル)にも長年携わってきた方。温暖化と原発再生可能エネルギーの関係についての話。先生の見立てでは、原発完全停止という状況下では温暖化防止はかなり困難で、選択肢としての原子力発電を残すべきとの立場。


二人目は瀬川先生。太陽光発電の研究をされている方。再生可能エネルギーは即効性のある選択肢ではなく、原発稼働停止をすぐさま補える性格のものではない、むしろ火力発電を長期的に代替していくものと考えてほしいとの意見が印象に残った。


三人目は萩本先生。長年電源開発に勤めた後東大へ、国家戦略会議にも関わっている。電力の需要サイドが無秩序であることを指摘し、料金設定等を通じた需要サイドのコントロールを提唱されていた。


四人目はいわずと知れた飯田哲也さん。北欧の事例を多数引用しつつ、政府・東電の皮肉をちょくちょく交えつつ、エネルギー政策の根本的転換を主張。


そしてトリが河野太郎衆議院議員。日本の過去の原子力政策が如何に問題先送りで無計画なものだったかを、プルサーマル計画と使用済み核燃料保管の話を軸に30分にわたり熱弁。


休憩後にパネルディスカッションがあり、再生可能エネルギーの現実性や、スマートグリッド電力自由化発送電分離等について活発かつイマイチ噛み合ない議論が続いて5時頃に終了、という感じでした。


内容はあまりメモっていないのでまあこんな感じです。もっと詳細にレポされる方が現れることを望みます。


終了後に山口先生にも申し上げたのですが、依拠している資料・数値の出所や、論文としての信頼性を不明確にしたままで議論をするのはあまり生産的ではないというのが一番の感想でしょうか。特に飯田さんがちょくちょく引用している海外の文献が、どこまで信頼の置けるものなのか疑問。


無論山口さんについても「やはりリファーされた論文でないとね」とはおっしゃっていたものの、この業界で査読というシステムがどれほどきちんと機能しているのかっていうのはそれはそれで疑問。


3.11後の現状を整理するという意味では意義のある要素も多かったのですが、エネルギー政策をここからどう形作っていくかについては中々不透明(状況から考えて実際にとれる選択肢が限られるとはいえ)なままでした。


↓会場で売られていた飯田さん・鎌中さんの共著

今こそ、エネルギーシフト――原発と自然エネルギーと私達の暮らし (岩波ブックレット)

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