Racial Conception in the Global South

※ISIS Focus読書会用のまとめです。


Warwick Anderson, Racial Conception in the Global South, Isis, Vol.105, No.4(December 2014), pp.782-792


著者のWarwickによれば、「人種科学(具体的には自然人類学や生物学)」という分野は基本的に北半球におけるそれがあたかも全世界的に通用するかのようなものとして捉えられてきたという。学術知としての人種科学からそれが政策や人々の生活に及ぼす影響まで、我々は北半球において生じてきた差別、隔離、優生政策といった事象を前提としてそれを考えてきた。


ここで、これまで人種科学の対象とはされてきたものの、人種科学を生み出す場所とはされてこなかった南半球に改めて着目することが重要だと著者は主張している。そして南半球における人種科学やそれに基づく政策は北半球のそれよりも「plasticity(柔軟性)」を持っているという仮説が提示される。たとえば混血することについて、ニュージーランドラテンアメリカにおいてその優位性を評価するような研究がみられるようになること、などがその証拠としてあげられる。また優生学のあり方についても、北半球の「強固な」優生学とは異なる南半球独自のものが営まれていたとも指摘される。


筆者は20世紀初頭の多数の文献を整理・提示したうえで、これらの文献が南半球における人種科学のダイナミズムを明らかにするうえで分析されるべきであるとする。そこでは知の還流と成立といった歴史的な実態を追うのみならず、直接的な関係はなくても比較社会学的な分析を行うことで見えてくるものがあるという。それは最終的に、これまでnormativeなものとして機能してきた北半球起源の「人種科学」の歴史を相対化することにもつながるかもしれない。